エンジニアライフでの”ニックネーム”の効用ーサントリー:せんべい という名前の意味するところ

サントリーに入社して数ヶ月でスタートした「せんべい」(「せんべえ」ではなく)というニックネーム。40年近いエンジニアライフでこの”センベイ”を使い続けていました。社内外、国内外を問わず年代を超えて呼んでいただける「センベイ」という名前を持てたことは、単に識別だけのためではなく、自分にとっても利便性が高くすぐに認識してもらいやすく、たいへんありがたいことで嬉しい限りです。とはいえ、なぜ「せんべい」と呼ばれているのかという質問も多く、「やまもとせんべい(山本千兵衛)」の由来や付けた理由を紹介することで、どのようなニックネームをつけるのが良いのかを参考にしてもらえればと考えています。

同じ苗字がこんなにいる職場とは?

サントリーに入社して配属されたのがビール工場でした。びっくりしたのは、たった100人ほどの工場に、山本が4人もいたことです。さらに直属の先輩(コーチャー)が山本さん。電話にでても「どっちの山本なんだ?」と聞かれるので、「顔の良い方です。」と答えると「バカヤロー」と返ってくる(当たり前ですよね)。それで、自分でつけた呼び名が「せんべい」であり「せんべいさん」だったのです。

以後37年間サントリーの「せんべい」で通し切りました。

後輩の協力ですぐに浸透していく「せんべい」

最初の工場から異動した次の工場では6人の「山本」がいたりしたこともあり、徐々に社内に「せんべい」は浸透していきました。大阪商工会議所会頭をされている鳥井副会長やサントリーホールディング副社長にも、ごく普通に「せんべい」と呼んでいただいてました。上司や先輩方だけでなく、後輩や他部署、新入社員にも浸透し、「せんべいさん」と呼ばれていました。(この辺までは浸透していました・・笑)

後輩のみなさんに聞いてみると、「あの先輩のことは、せんべいさんと呼んだら良いから・・・」と引き継いでくれていました。ありがとうございました。

社外の方にも通称で呼んでいただくメリット

社外の方も主なお取引先様にも、「せんべいさん」と呼んでいただいてました。こちらとしてもニックネームで呼んでいただけると懇意にさせていただいている会社様なのだなということがわかります。担当者の方が変わっても懇意にしてもらっていることがわかるので、非常にたすかりました。最初は恐る恐るお聞きになられますけれど、そこがまた面白いところです。

”北新地”攻略大作戦

大阪の本社に異動した際の若かりしころの話ですが、北新地に上司である部長に連れて行ってもらうことがありました。もちろん初めて行くので「誰?この若いお兄さんは・・」という感じで見られていたのだと思います。これは顔を売らないといけないぞと考え、『私は ”山本せんべい” です!』という自作の名刺をつくって、北新地のお姉さま方に配りまくってました。

「ドラえもん」か「せんべい」か?

大学時代に「せんべい」と名乗り始めたのですがそのきっかけは、ほぼ毎日オーバーオールを履いて顔の丸い坊主頭の同級生に、「山本、おまえはドラえもんみたいだな・・」と言われたことがあり、「それはお前やろ。俺はどちらかというと「則巻千兵衛」や。」と返したのですが、それ以降頭の中にこの「せんべい」という名前が残っていたのです。

「せんべい」はもちろんアニメで有名なあの方から

「せんべい」の由来は、一世を風靡した鳥山明先生が描かれたアニメ「Dr.スランプ アラレちゃん」の則巻千兵衛博士からいただきました。則巻千兵衛博士は、アラレちゃんのようなアンドロイドを作ってしまったり、それ以外にもいろいろなものを発明するエンジニアです。私もエンジニアのはしくれだったので、たいへん憧れたもので、「せんべい」と名乗らせていただいきました。

ご存知かもしれませんがDr.スランプこと則巻千兵衛博士は「せんべえ」と書きます。私は則巻千兵衛博士に敬意を払って「え」を「い」として、「せんべい」にしたのですが、実はそれ以外にも、いろいろ考えた末につけた「せんべい」なのです。

英語表記にこだわった末の「せんべい」

さらに「せんべい」の英語表記は「SEMBEI」としています。もし「せんべえ」なら「SENBE」または「SENBEE」などと表記するのかもしれません。

私は、外国人にも間違わずに呼んでもらいやすくかつ理解してもらえる名前であることをたいへん意識していました。

外国の方にとって、N→Bへの子音の連続は言いにくいので、M→Bという文字順になるようにしました。

またもし「せんべえ」という日本語表記を選択したならば「SEMBE」では「センベ」になってしまいますし、「SENBEE」では「センビー」と必ず発音されてしまいます(BEEは蜂を意味し、ビーと発音するので)。それで、日本語表記を「せんべい」として英語表記の後半を「BEI」と書くようにし「SEMBEI」としました。

それでも「SEMBIE」と見間違えて「センビー」とおっしゃる方もおられますけど、それは愛嬌として聞き流しています。

ニックネームでネイティブ気取りとは?

著名なマーケッターの神田昌典氏が2004年にだされた『お金と英語の非常識な関係』という著書の中で”名前だけでも「ガイジン気取り」になってしまおう”とおっしゃっています。

英語をスムーズに話したいなら、できるかぎり英語的発想をしていかなければならない。そのためには、セルフイメージを英語ネイティブ・スピーカーに変えると、英語的発想に切り替わり、スムーズに会話が続くようになる。
→自分に英語名をつけて、セルフイメージを英語ペラペラ人間に変えるのだ←

とあり、英語の名前をつけてみるのを推奨されています。同じような考えを40年近く前から取り入れていたのは間違いではなかったなと改めて感じて安心しました。

「せんべい」が招いた3つの問題

「せんべい」がサントリーで浸透したのは良いことなのですが、大きな問題が3つありました。

社内の社員検索システムで検索できない問題。社外からの郵便物が届かない問題。本名わからない問題。でした。

その1:検索できない問題

社内の社員検索システムで「ヤマモトセンベイ」で検索する人が多く、「エラーになる」「名前がでてこない」「電話番号やメアドがわからい」方が続出してしまいました。大昔はそんなシステムがなかったので気にしていなかったのですが。

その2:郵便物が届かない問題

社外の方が「やまもとせんべい」で送ろうとされたり、本当の下の名前がわからず「山本様」だけで送られてました。そのため多くの「山本」を経由することになったりするので、社外からの郵便物がなかなか届かないことが発生しました。

その3:本名わからない問題

そもそも社員のみなさんに「せんべい」と呼んでくださいと伝えていたので、私の苗字さえわからない方が増えてしまいました。要するに「山本って誰?」の世界になってしまいました。役員の方からも普通に「せんべい」と呼ばれているので、知らない方がおられても無理もないのですけれど。

最近は海外の著名人からも”Hi,SEMBEI!”と声かけ

サントリーを退社した今でも、海外の方と話をするときは、「SEMBEI」を使っています。例えば『モダンエルダー』の著者であるチップ・コンリー氏からも「SEMBEI」と呼ばれており、モダンエルダーアカデミーMEAの修了証も”Sembei Yamamoto”になっていました。MEAではほぼ正式な名前になってしまいました。それだけ浸透しやすいニックネームをつけることができたのだと満足はしています。

ニックネームひとつで世界が変わる

子供が産まれたら、どんな名前が良いのか考えに考えてつけますが、仕事やプライベートでつけるニックネームも同じです。ニックネームひとつをつけるにしても、いろいろなところー特に海外の方にも通用するニックネームをしっかりと考えてつけることが、最近では重要になってきていることを実感しています。ニックネームが正式名となった今、私は「サントリーのせんべいさん」から「SEMBEI in the world」をめざして今後も活動していきます。

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