注目! 酒類・飲料のプロセス設計に使える参考書籍はこれだ!

”酒類・飲料プロセス技術開発No1” せんべいが語る『ビールのプロセス設計に使える参考書籍はこれだ!』とは?

プロセス設計を行うにはそれなりの技術が必要ですが、学校ですべてを学んでいるわけではありません。実践あるのみで技術開発を進めながら様々な技術要素を学んでいきます。ネット検索で情報を得ることができますが、検索条件を見つけられないと意味がない。そこで、基本的な考え方を得るために使い勝手の良かった2冊の書籍をお伝えしたいと思います。

現物にあったプロセス設計をするには

プロセス設計をやったことがないという場合、設計に必要な情報は書籍や参考書から得ることになります。もちろんネットで検索すればいろいろ出てくるのですが、正しい情報かどうかを判断しなくてはいけませんし、もしそれが間違った情報でありプロセス自体がとんでもないものになってしまっては大変です。そのために参考書が必要になります。しかし参考書は参考にする本であり、自分たちの製造するモノに応じて、どんな材質で、サイズで、色で、重さで・・・様々なな条件にあわせてプロセスを考える必要があり、さらには操作性なども考慮にいれないといけないわけです。「どう参考にしたらいいのだ!?」難しく書いてあるものや優しすぎて使えないもの、そして巷にあるたくさんの本。何を選んだらいいのか迷うところです。

ビールの製造プロセスなんて知っているわけがない

私がプロセス設計をしていた時も同じです。ビール製造プロセスに使える何か良い参考書、何か良い情報がないものかと本屋を探してみたりしました。日本にビール会社は数社しかない(当時は今のようなクラフトビールはみあたらなかった)ので、ビールに特化したプロセス技術の本などはもちろんありません。ドイツにはあるというのを教えてもらいましたが、第2外国語がフランス語だったので、読めません。(「フランス語なら読めるの?」とツッコミがありそうですが、もちろん追加レポートで単位をもらったくらいですから、読めるわけありません。)社内の先輩方や社外メンターの方にも話を聞いてみました。紹介いただいた本は都内の大型書店で立ち読みして使えそうか判断していました。そしてその結果2冊の本に行き着きました。

プロセス設計に使える参考書籍

その本が『化学工学便覧』(丸善出版)と『初歩化学工学 化学工学協会編』(明文書房)の2冊です。

『化学工学便覧』

『化学工学便覧』は”化工便覧”とも言われており、厚さ10センチ位ある相当重いものです。化学工学の各操作別に分類されており、様々な公式や事例をもとに解説されています。化学工学の全てを網羅した大辞典的な書籍であり、化学工学を知る基本といえる書籍です。

『初歩化学工学』

『初歩化学工学』はほんとうに化学工学初歩の初歩で、たぶん大学の化学工学の授業で使われていた本ではないかと。電気工学出身の私でもを紹介されたこの本は非常に使い易かったです。現在はもう廃刊になっているようですが、化学工学の素人にもわかるこれ以外の本を当時は見つけられませんでした。

この本も各操作ごとに分類されていますが、事例や演習問題が規模的や内容的にもビール製造プロセスの設計に使えそうな実用的なものを中心に編集されており応用範囲が広い本です。

もちろんそのまま使えるわけではないです・・・

ビールのプラント設計に利用できると判断したこの2冊の本・参考書籍ですが、もちろん事例や計算式は化学工学の花形である様々な大型プラント、特に石油化学プラント、鉄鋼・製鉄所等の大型配管を事例にした記載が多く、例えば直径50cmもあるような配管の施工事例などが事例になっていたりします。(ビールプロセスはせいぜい10cm程度)そのため私がビールプラントの設計で使う数センチのサイズの配管やプロセスサイズに合わせて計算が必要となります。その場合ベースとなる部分や定数、固定値等がそのまま使えるのかどうか疑問ではあります。

例えば、ピンホールからの漏れ量の計算は、ノズルからの吹き出す水量の計算式を当てはめてみたり、数十メートル規模のプロセスではないので、重力加速度を無視して固定値にしてみたりとでも、そこはそれあれはあれということで、それなりに工夫しながら計算根拠を作り設計を進めるわけです。簡単な実験をすることもありました。

現物にあったプロセス設計・プロセス開発

あとは製品特有の性質を考えた上での設計になります。例えばビール製造機器を設計する場合はどの工程でも加圧状態である必要があります。なぜなら圧力が大きく下がると炭酸ガスが分離して泡立ち、その後どうにも手がつけられなくなってしまうからです。他にもビールは醸造酵母以外の菌を避ける必要があり熱殺菌が基本となります。ビールの温度が0℃くらいで、洗浄殺菌温度は100℃近くまでの温度幅があります。しかしこれが通常のプロセス仕様として成り立ってないといけないわけです。この条件に沿って2冊の本にある事例をこねくり回して計算をしプロセス設計をするわけです。事例のどの部分をどう生かすか・・・というところが設計者の力量によって変わってくるところです。そこがプロセス設計のダイナミックなところであり楽しいところです。

これからのプロセス技術開発と書籍

現在ではウェブ検索をすればほとんどの困りごとに対する答えは出てくる世界になりましたが、それでも自分の作りたいプロセスにそのまま当てはまるかどうかというのは難しいところです。なぜならネット検索する段階で使うべき化学工学的プロセスがわからなければならいからです。他社にはない加工プロセスを開発したいのであれば、実物の書籍を手元に置いて、あれでもないこれでもないとパラパラページをくりながら考えていくことが必要なのではないでしょうか。少なくとも私は手元から離したくないこの2冊です。

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