コンピュータよりも効果的な『桁合わせプロセス設計術』

”酒類・飲料プロセス技術開発No1” せんべいが語る『プロセス設計は桁合わせだ!』とは?

ネット情報やコンピューターによる計算でいくらでも精緻な計算結果が得られるわけですが、精緻な計算だからモノを作ることができるというわけではなく、ビジネスを考えればいかに安く早く品質の良いものを他社に先駆けて製造・販売することが重要です。そのためのプロセス設計で考えていくツールの一つとして、『桁あわせ』があります。この手段によって開発から製造までに要する期間を短縮し、事業貢献をしてきました。

どこまで精緻な設計が必要か

プロセス設計でどこまで正確に設計するかは、どんな分野のプロセス設計者でも悩むところです。
設計時間は限られていて、予算も限られている。製品品質も加工方法も設計したプロセス機器の設置スペースも条件だらけで、「どうすればいいのだ⁉︎」とぼやきがでるところです。

飲料・酒類の製造プロセスでは

サントリーで作る飲料や酒類の製造プロセスの設計でも同じです。
サントリーでは年間1000種以上の新製品が発売されています。もちろん全ての製品に対して新たなプロセス設計が必要なわけではありませんが、プロセス改造が必要な製品については、部材の手配、加工・設置の時間を考えると、設計に必要な時間も限られてしまいます。

原材料の要因

またサントリーの製品の特徴は、主要な原料が自然物、農産物であることです。そのため、工業製品のような規格通りのものではなく、ある幅の中で日ごと、ロッドごと、1個ごと変わるものであり、これらの原料を取り扱う場合には単に精緻な設計をしても意味をなさないわけです。
どこまで設計に幅を持たせるか、そしてその上で目標の製品品質を作り込んでいけるかが、プロセス設計者の腕にかかってきます。

規格サイズの要因

また飲料や酒類の生産プロセスは、自動車などのように一つ一つを切り出して削り出して作り上げていくものではなく、規格化された配管やプロセス機器をいかに効果的に選定して組み合わせていくのかが重要なポイントです。規格サイズを意識した設備設計技術が必要となってきます。

加工メーカーの要因

さらにプロセス設計者といっても、仕様をきめるためのプロセス設計であり、実際の設備機器の加工についてはメーカーの技術者の方に依頼するわけで、メーカーの設計者の方は依頼者の仕様を満足させるために、ある程度の安全率もかけて設計することになります。

『桁合わせ』とは

それでプロセス設計で心がけているいたのは『桁合わせ』です。

ラボで開発された新製品のスペックに応じて製造設備を考案し、その仕様を決めていきます。その仕様を満足するためのプロセス設計に必要な数値は『桁』が合っていれば製造できると判断するというものです。

もちろん全てが桁だけで判断しているのではなく、ゆずれない数字というものもありますが、まずは『桁が合っているか』が重要であると考えていました。

『桁あわせ』の考え方例

どのようなことかと例をあげてみます。
配管サイズの設定で、3インチと2インチのどちらのサイズにするかを考えることとすると、コストを考慮すると2インチにしたいわけですが果たして剪定可能なのかどうかの判断になります。

まず目標値が3インチの配管で0.1m/sなら2インチの配管にしても0.2m/s程度となります。その結果流速は同じ桁であり問題はなさそうであると判断します。
もし3インチで0.5m/sが目標値であるならば、2インチの場合は1.1m/sとなり、桁が1つ変わってきます。このような時はNGとするわけです。というのも目標値の3インチ0.5m/sもある程度変動するものと考える必要があり、その変動が同じように2インチでも発生していると考えると、変動幅が大きくなりすぎます。

例えばレイノルズ数が大きく違ってくることとなり、液体の配管内での性状に関して何らかの問題が発生する可能性がなきにしもあらずと考えてしまうわけです。
このような場合は、最初から配管サイズは3インチとして仕様決定するわけです。

わかりやすくするための説明であり実際はもっと条件や設計数値は複雑ですが、考え方は同じです。

業界のちがい

これをご覧の方は、「プロセス設計はそんなに簡単なことではないぞ」と思われていると想像しますが、業界・業種・製品・原材料などの違いはあれど、様々なファクターをどう考えていくかというところでプロセスが大きく変わってきます。また、計算値ひとつとっても、コンピューターでいくらでも精緻に正しく、有効桁も多く計算することが可能です。ただ実際の「モノ」をとらえたときに、どこまで詳しく設計に落とし込んでいくべきかを考えていくことも、プロセス設計者として必要なスキルではないかと考えています。

まとめ

飲料・酒類プラントにおいては、このような考え方『桁あわせ』の考え方の下で作り込んできて、「この値はゆずれない」「この値は桁あわせでOK」との判断ができるようになることが重要でした。それには経験だけではなく、現場現物をよく見ることと、製品の開発者と話し込んでしっかりとした意思疎通が重要なことでした。

何をポイントとして設計するか、選び方ひとつとっても安全性、品質、コスト、設計、時間等異なっています。その条件下で、優先度・重要度を考えながら設計する楽しみ、達成感を得ることができるのがプロセス設計の醍醐味だと考えています。

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