酒類・飲料のプロセス設計で飲料メーカーとして真っ先に考えるべき工程を知っていますか?

”酒類・飲料プロセス技術開発No1” せんべいが語る『酒類・飲料のプロセス設計での最重要工程』とは? ウイスキー・ビール・飲料水・コーヒーなどなど

酒類飲料プラントのプロセス設計において重要なのは洗浄工程です。特にビールは生ビールを製造しているがゆえ、洗浄不足による微生物汚染には細心の注意を払っていました。工程で使用する以外の微生物が検出されることはありえないという前提での厳しい工程設計をするのです。とはいうものの、プレミアムモルツでも1本二百数十円の製品です。天然水などの飲料水にいたっては、2Lでもスーパーだと百円台。コストパフォーマンスや生産性を重視する必要もあります。そのため、いかに短時間で効率よく誰がやっても確実に洗浄できるプロセス設計をし、多くのアイデアを盛り込んでいきました。

真っ先に考える洗浄工程

私がプロセス設計で真っ先に考えるのがこの洗浄工程です。ひとつの大きな工程条件は洗浄流速です。レイノルズ数でいう乱流域となるような流速で洗浄液を循環させます。どの部分をとっても必要な流速が稼げるようにするのがプロセス設計する者の腕の見せ所です。もちろん洗浄液の種類、液温、時間などのファクターがありますが、最も効率的な条件を見つける以前に流速が重要な工程条件なのです。

配管洗浄での難洗浄部位とは

例をあげると、プロセス配管の洗浄の仕方は、洗浄液のはいったタンクからポンプで洗浄液を工程に送り、プロセス配管を通って戻ってきます。これを温度調整しながら循環洗浄します。ただプロセス配管の中には洗浄が極めて難しい部分があります。

太いメインの配管から細い配管への分岐がある部分は、圧力損失の関係で細い方には必要な流速が流れにくいのは想像できると思います。理由はいくつかありますが、細い配管は太い配管よりも抵抗が大きいので、液体は抵抗の低い流れやすい方に流れます。また、細い配管の枝の出し方、向きにもよるのですが流れる液体の慣性の法則も関係してきます。このため、何らかの方策をとらなければ必要な流量の洗浄液を細い配管に流すことはできません。

出るか⁉️ 化学工学的な小技の連続

そこでさまざまなアイデア発想が効いてくるのです。私はちょっとした化学工学の小技を使うことで解決させていました。例えば、細い配管の分岐後の合流地点にベンチュリー管をつけて強制的に細い方に流れるようにするのです。他にも細い配管に洗浄時に回すポンプをつけたり、バルブで切り替えながら太い配管と細い配管を交互に洗浄したり、全くのオフラインで細い配管を手洗浄するという手もあります。しかし、余計な設備や動力が必要であったり、時間がかかったり、手作業が増えるなどの手間が新たに発生します。そのため洗浄工程中に効率的に洗浄ができるようにすることができるかどうかが重要となってくるのです。洗浄工程自体は製品ができないので、ロス時間となりますのでいかに短縮するかが課題なのです。

怖い手作業のばらつき

そしてもうひとつ注意すべきことは、誰がやっても間違いなく洗浄できるプロセスであることが必要です。前述のような配管を外して手洗浄するとなると、作業者の手間もありますが一定の洗浄レベルに達していないと洗浄不良が発生することになります。バルブ切り替えも動作不良しないようにメンテナンスする工程も増えてきます。誰がやっても間違いなくできる。あえて考えなくても手順通り動かせば完了する。そのような工程が必要なのです。

日ごろからの練習を

このようなアイディアは多くの経験と知恵によって形になるなります。もちろんボツアイデアもたくさんありますが、まずは数勝負のところもあるので、どれだけプロセスアイデアが出せるか日ごろの練習が大切になってきます。

たとえ洗浄工程ひとつをとっても、酒類飲料の製造プロセスでは洗浄の失敗は命取りになります。基本にそって頭を使って形にする。ひとつ一つの小さな達成感の積み重ねがプロセス設計者には嬉しく、今日も美味しくビールを飲むことができるわけです。

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