プロセスエンジニアが「街ブラ」すべき意味は? ウインドウショッピングではなく

”酒類・飲料プロセス技術開発No1” せんべいが語る『会社のまわりにどんな店舗があるか知ってますか』とは?

プロセス設計・開発を行うとき、図面を描くことや模型をつくってみることはよくあることでプロセスエンジニアの仕事のひとつでもあります。電子化することで360度どの方向からでも設計したものを見ることができます。しかし、試作段階や構想段階ではちょっとしたプロセスフローを手書図面やスケッチ、簡単な模型を使って説明する方が早くて多くの情報・意見をもらえることができます。そのためにも、いつでも模型がつくれるような準備ができているかどうかで、その後の進み方が大きく変わってきます。私はどのようにクリアしてきたかをご紹介します。

新プロセスは腕の見せどころとはいうけれど

新しい酒類・飲料の製造プロセスを考えろと言われても、全く新しく機械を設計して作るならいざ知らず、生産工場の設備を動かしたまま導入するというわけのわからないテーマが次から次へと降ってくる。やれという方は簡単ですが、考える方は大変です。導入するプロセスによっては稼働日も決まっていておまけに金もないということがあります。「プロセス技術開発者の腕の見せ所だよ」とおだてられますが、内心そんな理不尽な…というような要求ばかりうです。そんなことありませんか?

私も仕事柄このようなことはしょっちゅうありましたが、そこは割り切って自分のやりたい感覚でやってました。やってられませんよね。

お題はもらったものの

あるとき、新しい製造プロセスの実用化についてのお題をもらいました。今のプロセスを生かしたまま改造して微妙な温度調整までできるような熱利用プロセスをつくるというものでした。「またかいな・・・」と思いながらも1週間がたち、そろそろやばいなと思っていた通勤電車の中。紅白に塗り分けられた煙突が目にとまりピンとひらめきました。

スケッチでは説明するのは無理

「これしかない!」思いついたらすぐ絵にして…と手持ちの手帳にスケッチしておこうとしましたがどうも描きづらい。頭の中では設備ができていて液体の流動と熱の動きまでが見えているのですが、描き出せない。自分ではわかるんですが、上司や仲間、施工会社の方には絶対に説明してもわかってもらえないと絵で説明することは断念しました。「作るしかないか…」作戦を変更し、スケッチでの説明から簡単な模型をつくって構想段階のプロセス承認をもらってしまおうと画策しました。

最寄りの駅から一目散

最寄りの駅に着くやいなや改札を抜けて一目散に早朝から営業している金物屋さんに直行。ボール紙、ビニールホース、プラスチックのトタン板、ビニール袋、洗面器などを買い込んで会社に向かいました。
酒類・飲料のプロセス設計者としてというよりも、エンジニアの端くれとして、このような使える店舗を数多く知っているかどうかというのはとても重要なことだと思っています。

早朝から営業している店舗を知ってますか?

ホームセンターであっても、朝の8時から空いているところはあまり無いですし、ましてや都会のメインターミナル駅周辺にはありません。(大手町駅、新宿駅、梅田駅周辺のホームセンターを検索しても出てきません。)そこでホームセンターでくとも、近くにはどんな店舗があって、どんなものを売っているのかを日ごろからリサーチしておくことが役に立つのです。欲しいものがなくとも代替品となるようなものを置いているかどうかまでは、ネット検索だけでは分かりません。

日頃のブラブラが功を奏す

例えば会社の周辺で早朝に空いている店にはどんな店舗があるのか? そこには何を置いているのか? 1番近いコンビニのラインナップはどんな感じか? 利用できそうなものがあるのかどうか? など。始業時刻ギリギリに到着するのではなく、少し早めに駅に着いて会社周辺の店舗事情を調べてみるのも面白いですし、いざというときの強い味方になってくれます。日ごろの町歩きがアイデア発掘とともに、アイデア実現についても大きく助けてくれるのです。

ちなみに私が見つけていたのは、早朝から空いている金物屋、あらゆる種類の竹を扱っている店舗、製材所、いろいろな種類の紙を扱っている加工工場、リサイクルショップなど、ブラブラ楽しみながらも自分の手助けになる手段を数多くストックしていました。

楽しい仕込段階

さて、お題として上がっていた熱利用プロセス機器ですが、煙突のアイディアをもとに、出勤してすぐに打ち合わせテーブルを占拠して工作を始めました。ハサミやカッターナイフで四苦八苦してセロファンテープやガムテープなどで切った貼った。出勤してくる役員の方や部長に「何をしてるんだい?」と声をかけられますが、「すごいものができますので少々お待ちを・・・」とやりすごします。

さて完成できたのか?

何とか始業時刻までに作り終え、上司のもとに持っていって構造を説明。もちろん一発OKをもらい作った模型を小脇に抱えて、すぐに工場に向かって出かけていきました。工場に向かう電車の中で、乗客の方々からの熱い視線を今でも思い出します。

実現するための手段もプロセス技術開発です

このくだりは『サントリー日和』という本にも載っているエピソードです。プロセス技術開発をするエンジニアとしては、図面を描いたり、模型を作ったりすることは通常のルーチン業務かもしれません。ただ、描きたいとき作りたい時にすぐに取り掛かれるように日頃から準備しておくことも重要な心がけであり、プロセス技術開発の要素のひとつだと考えています。

Visited 26 times, 1 visit(s) today

コメント

タイトルとURLをコピーしました