奇妙な現場の操作制御盤に設計審査会で大揉め 基礎的設計をも変えた現場仕様の重要性

プロセス機器の設計で大事なことは『美しいこと』というのが一つの条件だと私は考えます。
機械装置を設置するときは基礎の高さや奥行きをそろえる。
配管であれば直線・直角。太さは揃えて、溶接後も目立たせない。
電線を配線するときはきちんと電線管にとおしたり、ラック上で並べて結束帯でしばっておく。制御盤はスイッチや表示灯の高さや色、ボックスの形状を揃える・・・など見た目の美しさ、配置するときの美しさが必要です。それは設計の基礎とも言えるものです。見た目のかっこよさに惹かれる設計者も中にはいますが、実用的な考えのもと、故障箇所や不具合の発生している箇所がすぐにわかるようにしておくという理由の方が大きいです。
同じように現場に置く操作盤や制御盤は遠くからでも状態がわかりやすく、近くでの操作や監視がしやすいものが必要です。

盤の仕様の今昔

昔は鉄の盤にベージュ色のようなどこにでも溶け込める色の焼き付け塗装でしたが、酒や食品を扱う工場では、水分が多く炭酸ガスなどの酸性ガスの影響があるので、腐食しないように価格は高いのですがステンレスに変わっていきました。ちなみに海外ではステンレスが昔から主流でした。

ステンレスの盤にもいろいろあって・・

ヘアライン仕上げといって上から下へながれるようなラインをつけた盤や、ブラストといって砂で表面を凸凹にしたすりガラスの表面のようなざらざらした盤。ピカピカの顔が映るような盤を好む担当者もいましたが、私は好きではなかったです。
それは、盤を操作する時に、盤を見る自分の顔や近くにある他の盤の表示等が反射するので、誤って判断してしまいそうで視認性に劣ると思ったからです。

メーカーさんの設計で不足していること

さて、現場に置く操作盤ですが、プロセス設計をしていて気になるのは、メーカー提案の盤が使いづらいことが多いということです。これは当たり前の話で、机上で仕様をメーカーさんにだすユーザーの問題でいかに現場の意見を取り入れていないか、頭の中で設計しているのではないかと思われることです。他にも輸入の設備機器に付属する盤は大き過ぎて背が届かないなども要因の一つだと言えます。

ヘンテコな盤を設計しました

このような例がありました。ある新しい工程で2300mmの高さの現場操作盤を作る時に、スイッチの位置を盤の下から1000mmくらいのところにしたものを作りました。一般的には1300〜1500mmくらいの高さに操作スイッチを置き1800〜2000mmくらいのところに表示灯を置きます。それが随分下にスイッチが離れたどうみても不細工な盤を設計しました。

設計審査会で注目の的

新しいプロセス機器を導入する際は、設計審査会を開きます。
その設計審査会でも1つだけヘンテコな盤・見た目不細工な盤であったので質問が多数ありました。

この盤は、腰痛持ちの課長さんの部署にいれる新しい設備で、いっしょに作業設計をしている現場担当者の方ととことん考えての末、ほぼ100%意見を取り入れて設計した盤だったのです。

机上だけでなく、ダミー設備で現場シミュレーション

設計時に、担当者とともに実際の作業を想定して、ダミー設備や同等のホース、作業用機器を揃えて何度もシミュレーション作業を行なった末決めた仕様でした。
現場でのスイッチ操作を考えると、太いホースを持ったタイミングで操作をすることが多いことがわかり、操作上中途半端な高さにスイッチがあると腰を痛める可能性があり、ホースを安定的に支えながら自然とスイッチ操作ができる高さがこの高さであったわけです。

自信をもって設計審査会をクリアするには?

設計審査会では、操作時の様子を再現しながら説明したことで、皆さん納得いただき無事発注にいたりました。現場の課長さん、担当者の方の協力があってこそのプロセス設計です。

実際に使われる方の負担になりにくくするにはどうすれば良いか? 机上の設計だけではなかなか想像もつかないようなほんの小さなことにもこだわって設計することで、多くの方に良いプロセスだと言っていただけるものになるのを身にしみて理解した操作盤でした。

今ではこの工程もなくなってしまったので、少し寂しい感じがする今日この頃です。

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